謎の男。神田健
From:寺本隆裕
東京でIT企業に勤めていたぼくは、焦っていました。
このままだとダメだ。なんとか自分の事業をスタートしないといけない。と、漠然とした不安に駆られていました。
エンジニアでしたから、何かモノを売るなんてことはしたことがありません。自分の会社以外で金を稼ぐ方法を知らなかったんです。
自分が何ができるかも知らなければ、自分が社会的にどのくらいの位置にいるのかもわからない・・・(15年くらい前の当時は社会人3年目くらいだったと思います。仕事は割と頑張っていたと思いますが、自分の社会的な価値がどれくらいなのかは全然わかっていませんでした)
そのため、日々、インターネットで色々と起業や副業の情報収集をしていました。
mixi(今で言うFacebookみたいなもの)にはたくさんの「起業家コミュニティ」があって、それらもウォッチしていました。当時はまだまだ「インターネットでどうやって金を稼ぐか」をほとんど誰もわかっていなかった時代。iPhoneもまだありません。
そんな日々を過ごしていた、とある日曜日。
意を決し、たまたまmixiで見つけた起業家の集まり(数千円の参加費)に行ってみることにしました。取引先以外の社外の人と会う、なんてことがほとんどなかった僕はかなり緊張しました。が、とにかく外に出てみると何かがあるかもしれない、と思ったんです。
確か、ルノワールだったと思います笑
奥の会議室に通されました。僕は早めに着いたので、ついた時には主催者ともう1人の参加者がいただけでした。最終的には10人くらいの起業家が集まりました。その中の数人は顔見知りで、あとは今回が初対面という感じです。
なんとなく会がはじまったのですが、、、彼らが何を話しているのか全然意味がわかりません。誰かが自己紹介をし、それについて他の人(たとえば50代くらいの男性社長)が「それは面白い」などと相槌を打つのですが、何が面白いのか、それがどうお金になるのか、全然わからない・・・。
自分の自己紹介の番になっても、話すことはほとんどありません。気を使ってくれた参加者が2〜3、簡単な質問をしてくれましたが、特にそこから会話が発展することはありません。
結局僕がその会の内容について覚えていることは、「本名じゃなくビジネスネームで活動している人がいる」ということだけ。参加者のうちの一人は、亡くなった自分の息子さんの名前と事業ミッションを掛け合わせたようなビジネスネームを持っていたんです。
おお、なんかかっこいいじゃない。
そう思った僕は、その人に、僕のビジネスネームを作ってくれと図々しく頼みました。そして提案されたのは、
「神田健」
神田昌典さんと本田健さんを合わせた名前です。
おい!テキトーじゃねーか!
と思ったものの、お願いして無理やり作ってもらった名前に「嫌です」と言うことはできず、そのmixiコミュニティで僕は神田健を名乗ることになりました。とはいえ僕も、何をmixiで発言していいかわからぬまま、そのコミュニティからはフェードアウトすることになったので、ほぼ神田健としての活動はありませんでしたが、、、。今思い返すと、怪しいビジネスに勧誘されなくてよかったなと思います。いい人たちで、よかった。
このように、この会では完全に足手まといになってしまっていましたが、そうやって一歩外に出た経験はひとつ、自信にはなりました。
数千円ではありましたが、身銭を切って、わざわざ休日に出かけて行けたこと。自分の仕事の話をキラキラと話す人種に出会い、憧れを抱き、そういうことに憧れるんだという自分の価値観に気づいたこと。そして、自分の世界を広げる必要性を、恥ずかしい・場違いな体験をすることを通じて、頭ではなく感覚でわかることができたこと。。。
思い返すと懐かしいですね。
その会に何も貢献できなかった僕に、優しくしてくれた参加者のみなさんに感謝です。
コンフォート・ゾーンを抜けろ
ビジネスの世界では「コンフォートゾーンを抜けろ」という言葉があります。コンフォートゾーン=自分が心地いいと思う領域。ストレスを感じない領域のことです。コンフォートゾーンの中にいればストレスも、問題も、恥ずかしい思いをすることもありません。ですが一方で、自分に変化が起きることも、成長することも、そして成功することもありません。
そしてこうも言われます。「もし自分がコミュニティに属すなら、自分が一番下っぱで、不快で居心地が悪いとに思うようなところに属せ。なぜならそうなれば自分が一番、そのコミュニティから多くを得ることができる」
もしあなたが、自分の成長を真剣に考えているなら、
コンフォートゾーンの中にいることが多いのか、それとも外にいることが多いのか、一度、考えてみるといいかもしれません。
「神田健」を名乗ることは、別の意味でコンフォートゾーンの外です笑
寺本隆裕